「咬む」メカニズム

咀嚼運動(下顎運動)のメカニズム

咀嚼運動のコントロール

食事をするときに、どの歯で何回噛むかを考えたことはありませんよね。
咀嚼運動をコントロールする要素には、以下5点があります。

1.歯(歯根膜) 2.顎関節  3.下顎を動かす筋肉(咀嚼筋)  4.舌 5.口腔粘膜

これらはすべて中枢神経系によってコントロールされ、次の感覚を感じ取る受容器によって、相互にしっかり連絡のとれた協調形で結ばれており、その求心路は小脳に通じています。この求心路は、空間的に配置されたさまざまな筋肉からの刺激を伝え、小脳でこの刺激を調節して下顎の位置や運動を協調させます。

特に臼歯部に審美的材料を使用する場合は注意が必要です。下図のように、咬みしめ時には水平的に100ミクロンぐらい歯牙が変位し、常に歯牙の咬合面(咬みあわせの面)に非常に強い力がかかることになるためです。

咀嚼運動を分解してみると・・・

例)から揚げを食べるとき

1.から揚げを口から入れ、前歯で大きく小分けする。 2.小分けしたものを奥歯で小さくすり潰す。 3.から揚げの端っこの固いところが、奥歯からこぼれ落ちる。4.舌と頬を使って、こぼれたものを奥歯へのせる。5.固いものをのせると、歯を守るために感覚受容器が防御反応を起こし、反射で口が開く。6.一連の顎の運動を咀嚼運動という。

咀嚼系の受容器の分類(咀嚼運動をコントロールするセンサーの役割)

1.歯根膜の受容器(歯の根の周りにある靭帯の中の圧力センサー)

歯の根を取り巻く神経で、歯に加わる機械的な負荷は歯根膜を圧迫し、センサーを刺激し、加わった力の大小を脳に伝えます。

2.筋紡鍾(きんぼうすい)(下顎を噛む為に動かす筋肉繊維の中に圧力センサーがある)

筋肉内部の緊張度を知覚し、中枢へ伝える役割を持っています。また噛む物の硬さによって、筋肉の動かす力を強めたり弱めたりしています。

3.関節円板の受容器(顎の耳の前にある顎の関節内の靭帯にあるセンサー)

顎関節内に存在する関節円板に存在し、防御反射にあたります。歯の周りの組織を過重負荷から守ることが目的で、閉口筋の活動を抑制し、力のバランスコントロールを行い、動いた顎の位置を脳に信号を送っています。

4.口腔粘膜の受容器

食塊が口腔粘膜と接触することにより、咀嚼筋及び顔面筋の運動制御を行っています。食べ物がお口の中のどの部分にあるか、認識して脳に信号を送っています。

各部位についているセンサーと脳内の顎の動きをコントロールしている中枢との間で、信号をやりとりして、バランスよく食べ物を細かく砕いて、嚥下するまでの顎の運動(咀嚼運動)をコントロールしています。

バイトプレート(マウスピース)による咬み合わせ治療の目的

1.感覚受容器(圧力センサー)への圧力の軽減

ひとつは、かみ合わせの全体のバランスを整えるとともに、歯根膜の歯の根を取り巻く感覚受容器(圧力センサー)に加わる圧力を減少させ、受容器から中枢に伝わる信号をブロックすることにあります。特に左右の臼歯部がバイトプレート(マウスピース)に接触した時、左右の全ての臼歯が均一な力で左右のバランスがとれている状態にバイトプレート(マウスピース)を合わせます。且つ、下顎が左右前方に移動した時、左右の犬歯と前歯によって下顎骨体が下方に下がるようなガイド面をつくることにより、左右の臼歯部における干渉をなくします。このようなバランスにマウスピースを使ってかえることによって、左右の額関節や筋肉または首への負担を軽減します。

2.筋肉のリラックスを支援

感覚受容器(圧力センサー)への圧力の軽減を受けて、中枢から筋肉に信号が届かなくなり、筋肉をリラックスさせる効果も期待できます。これらメカニズムを経て、歯ぎしりの多い患者様の筋緊張性頭痛や、首・肩こりなどが軽減される場合もあります。

※バイトプレート(マウスピース)によって、噛み合わせの左右の奥歯の接触を対称的に咬めるようにし、左右前方に顎を動かした時に大臼歯部が接触せずに、小臼歯と前歯が顎の動きを誘導する。このようなバランスをバイトプレート(マウスピース)で作ることによって、筋肉をリラックスさせ顎の関節や首にかかる負担を軽減させます。

3.睡眠の質の改善

2番のようにバイトプレート(マウスピース)による全体の噛み合わせのバランスを改善させることによって、睡眠時に噛みしめ癖のある人は、筋肉次第の動きも徐々に軽減し、その結果として睡眠時の脳の活動も低下し、より質の良い睡眠に改善される場合があります。

バイトプレート(マウスピース)を入れることによって、特に歯根膜のセンサーから脳に送る信号が、極端に少なくなることで、脳の緊張が軽減し、より深い睡眠をとれるようになる場合もあります。そのことによって、睡眠中に脳の疲れを癒してくれたり、身体の免疫機能を上げてくれたり、身体全体のバランスを正常に戻してくれる効果が期待できるのです。

咬み合わせが悪いと起こる問題

歯の摩耗

悪い噛み合わせとは

1 切端咬合(上顎前歯と下顎前歯の切端が咬み合わさる) 2離開咬合(口を閉じても、上下の前歯が接触していない咬合) 3反対咬合(上顎前歯の外側に、下顎前歯が咬みこむ)

上下に噛みしめた時は、左右の大臼歯が噛む力を負担し、顎を前方側方に動かした時は、本来は前歯や小臼歯が顎の動きを誘導するのが正常なバランスです。ところが、上記の三つのような噛み合わせだと、顎を前方、または左右に動かしたときに、下顎が前下方にスライドせずに水平にずれてしまいます。特に歯ぎしり癖などの異常な筋肉の緊張を持った方は、より歯への負担が増えることになります。
上下臼歯部が臼(うす)状の接触を起こし、あごの筋肉や、関節または首などに大きな負担がかかりやすくなります。その為に、口腔以外に症状が悪化する場合があります。天然歯同士でかみ合わさっている場合でも、経年的には磨耗により、歯のすりへりが起こるのです。

歯のすり減りが進むと・・・

天然歯、歯科用金合金、セラミックなど、口の中は多種多様な材料で歯を治療しています。悪い噛み合わせによって歯のすり減りが急速に進行すると、セラミックなどは破折(はせつ)を引き起こしたり、場合によっては金属の芯が入った歯根がひび割れを起こしたりすることがあります。

  • 上下異種材料により、表面の硬さの違いにより磨耗が起こり、上下のかみ合わせの高さが変わり、あごのズレが起こります。
  • 両側に義歯などが使用されている場合、人工歯の磨耗が大きくなると、上下の前歯の接触 が強くなり、修復物が割れたり、脱離したり、歯の歯根にひび割れが出てきたりします。
  • 下顎位(習慣性咬合位)にずれが起こりやすいことがわかっています。
  • 特に非常に強い噛みしめや、歯ぎしりの癖をもっている人は、症状が顕著に現れる。

「心の病」と噛み合わせの関係

「心の病」が急増!?

6割が「心の病」を抱えている

近年、30代の会社員に、うつ病や神経症などの「心の病」が急増していることが、財団法人社会経済生産性本部メンタルヘルス研究所の実施したアンケートでわかった。

30代にもっとも多いとした企業は、2004年ではほぼ半数だったのが、2006年には61.0%に増加した。

また6割以上の上場企業が、「心の病」を抱える社員が増えたと回答し、IT産業に関連する人は、「心の病」、心身病が急増している報告もあります。

(2006年8月21日朝日新聞朝刊より抜粋)

日常生活の症状緩和もお手伝い

たとえば、お仕事がIT関係の方など、長時間にわたるパソコン使用で視覚情報にかかわるストレスが多い方に症状緩和のご提案をしています。パソコンのモニタの上に「ニコニコマーク」のシールを貼り、気づいたときに食事以外では上下の歯牙を接触させない意識をしてもらうことで、筋肉の緊張をほぐし、首などにかかる負担を緩和させます。また、1日数回、顎のストレッチを行うのも効果的です。一週間のうちに二度ほど、ご自身の時間を作って頭(脳)をリセットすることが重要です。

過度のストレスがかかると、顎の筋肉に異常の緊張をきたし、咬み合わせの悪化へと繋がります

ストレスを受けやすい生活環境のもとでは、脳の著しい緊張が起こり、それが間接的に顎の筋肉の過度の緊張へと繋がり、かみ合わせの悪化へとつながり、さらに全身の病気へと影響していきます。

A
  • ストレスを受けやすい生活環境(職場、人間関係、パソコン作業、リラックスできない環境等)

⇒脳神経の疲労へとつながる

B
  • 過度のくいしばり
  • 睡眠中の歯ぎしり
  • 眠りが浅い
C
  • 修復物の破損
  • 開口障害
  • あごの筋肉
  • 関節の異常
  • 慢性頭痛、
  • 肩、首のコリ
  • 手指のしびれ

⇒かみ合わせの乱れ方によっては、上記の症状が顕著にあらわれる。

ホルモン分泌の異常、自律神経のバランスの乱れ体全体の姿勢のゆがみ、全身症状、免疫力の低下、循環器系疾患の発病、睡眠障害、精神障害につながる

口腔内の現状を診ることによって、その人の生活環境がどの程度のストレスによって、体にどのような影響をうけているかを把握することが可能になります。歯科治療においてこの先、脳神経系(心理的)疲労の早期の発見と、適切な処置ができれば、全身的悪影響を防止し、歯の健康もより長く維持できるものと考えられます。

最近の物忘れ、しっかり噛めてないのが原因かも?

自分の咬み合わせに自信はありますか?

あごの関節の音が鳴る 鏡に向かって、大きく口を開けて顔の正面を見たときに、顔の中心に対して下のあごが左右にずれている 食事をするときに、片側ばかり使っている

ひとつでも当てはまる場合は、何らかの異常が存在することが考えられます。このような症状を感じたら、かみ合わせ専門の歯科医師に相談されることをおすすめします。

天然歯・治療した歯をなるべく健康に使うために

予防策として、悪いかみ合わせでも昼間に強いくいしばりがときどき起っていることを自分自身で認識することが大切です。なるべく意識的に普段上下の奥歯(大臼歯)を接触させないで、わずかに空いた状態に保ってください。そうすることにより、筋肉の緊張が著しく減少し、関節や首・筋肉など、負担がかからなくなります。

当院の咬み合わせ診断

オクルーザーを使用して正しい咬み合わせを判断します。咬み合わせの癖や、強弱などから咬み合わせ治療のためのアドバイスを行います。

オクルーザー 術前

咬み合わせのバランスが悪いことで頭痛や関節痛、開口障害などの症状を引き起こす場合があります(咬合力381.0N)

オクルーザー 術後

数回の微少な咬合調整により、左右のバランスが取れた状態です(咬合力538.5N)

なるべく左右が対称的に、特に大臼歯部において「噛む力を受け止めれる」ような咬みわせが非常に重要になります。

睡眠と噛み合わせの関係

ストレスを受けやすい生活環境(職場、人間関係、パソコン作業、リラックスできない環境など)が、脳神経の疲労へとつながります。これにより、浅い眠りや過度のくいしばり、睡眠中のはぎしりといった歯のかみ合わせへ影響を及ぼすのです。睡眠中に歯ぎしりが起こっている場合は深い眠りがとれません。

睡眠と疲労回復

睡眠は大脳皮質の意識や、覚醒の保持に関係した脳幹を休息させる役割をもっています。脳神経系の疲労の蓄積は、その大部分が十分な質の良い睡眠を確保できないことから生じるケースが多いのです。よって脳の疲労は、深い睡眠によって積極的な回復効果があるのです。

ストレスが引き起こす影響

ストレス状態に陥りやすい特性をもつ人が、強度の心理的ストレスにさらされた場合、過度の歯ぎしり、入眠困難、中途障害により睡眠障害が発生してしまうことがあります。

行動特徴
  1. 極端に精力的な活動
  2. 攻撃性が高い
  3. 時間の切迫感が強い
性格特徴
  1. 几帳面
  2. 緊張しやすい
  3. 完全癖
  4. 怒りやすい
睡眠への影響
  1. 居眠りがしやすい
  2. 寝つきが悪い
  3. 熟睡感が少ない
  4. 睡眠中の過度の歯ぎしり
さらに長期間、心理的ストレスが続くと……

昼間のストレス解消(運動など)によってストレス状態が解消できれば、十分な時間、良質な睡眠が取れ、睡眠は質的に良化(※深い睡眠がとれる)するため、悪循環に陥ることはありません。

深い睡眠(ノンレム睡眠)が取れないと起こる影響

かみ合わせのバランスに問題がある場合に慢性的なストレスにかかると、無意識下でのかみしめが病的に強くなることがあります。睡眠中の過度の歯ぎしりがある場合には、バイトプレート(マウスピース)を装着したり、投薬を併用したりすることで、歯ぎしりの軽減、睡眠の質の改善が可能です。これらの悪影響の始まりは、1本の歯の治療から引き起こされる場合も多くあります。

生体リズムをコントロールしましょう

十分な睡眠がとれないと、生体としてのリズムが徐々に崩れてきてしまいます。深刻な睡眠障害や全身の不調につながりかねないので、日光に浴びて生体リズムをリセットしたり、適度な運動で眠くなるように促したりといったことをしてみましょう。理想的なのは、自然光の下で身体を動かすこと。心身ともにリラックスすることによって、眠りに入りやすくなります。

かみ合わせ治療紹介

このページの先頭へ